Interview: Nightwish (Tuomas Holopainen)

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Tuomasインタビュー (Get Ready to ROCK!)

2004年2月29日日曜日 Phoenix Sound スタジオ Wembley、London

私はPhoenix Soundスタジオ(新しく建設中のWembley Soccer Stadiumのクレーンの影にある)の独占リスニング・セッションに招かれたラッキーなジャーナリストの一人となることが出来た。スタジオは非常の大きなホールになっており、オーケストラやクワイアもすっぽり入りそうな大きさで実際バスケットボールのコートも収容できるかもしれないほどだ。

少人数の集団、そこにいたのはNightwishのTuomas Holopainen、マネージャーのEwo Rytkõnenとレコーディング・エンジニアMikko Karmilaで、土曜の夜にフィンランドから飛行機でやってきて、1日をレコーディングに費やした後月曜日にはフィンランドに戻る予定だ。彼らの目的はアルバム11曲中5曲のオーケストラとクワイアのパートのレコーディングを完成させることだ。レコーディングは1日を通して行われ、London Session Orchestraのレコーディングは朝から午後まで、「エレクトリック・バイオリン」のレコーディングが午後5時~7時、そして夕方はクワイアのレコーディングとなった。レコーディングされた曲は“Nemo”(ニュー・アルバムからのシングルになると共に、ビデオ・クリップも製作される)、“Wish I Had An Angel”、“The Siren”、“Higher Than Hope”、そして“Dark Chest Of Wonders”だ。

6時を回って到着した私は、気持ちのいい椅子と素晴らしいオーディオ設備のある部屋に案内された。新しいNightwishのCDは既に2トラック目が流れている。私は椅子に着き、下記の通り、曲を聴いた感想をいくつかメモした。

Planet Hell

すごくヘヴィでNightwishとしても驚くほどダークな曲。

Wish I had an Angel

キャッチーでsing-alongなコーラスがある。間違いなく2番目のシングルになるように聞こえる。

Ghost Love Score

10分を超える幻想的な叙情曲。オーケストラとクワイアが非常のヘヴィに使われている。

Creek Mary's Blood

これもまたオーケストラがフィーチャーされた曲で、これはスロー・バラードになっている。これを聴いたとき、Tarjaが映画音楽で歌っているような感じがした。

Kuolema Tekee Taiteilijan

彼らの母国語で歌われる、魅力的なバラード。

Nemo

エンジン音のようなギターのリフを持った、Nightwishらしい曲。

The Siren

東洋のアラブ的な効果音を大きくフィーチャーした曲。

(Bonus tracks)

そのうちの1曲はバラードで、充分気持ちが良くなる曲ではあるが特別なものもない曲、もう1曲は若干ヘヴィになっていてかなりNightwishらしい曲。しかし最後の1曲は“Where were you last night?”という題名で、1980年代にBon Joviのアルバムから失われた曲のように聞こえた。

CDの演奏はいったん終わり、Ewoは私たちをスタジオのメイン・コントロール室に連れて行った。そこではプロデューサー/アレンジャーのPip Williamsと彼のチームが、クワイアが歌う“Dark Chest of Wonders”といった様々な曲をレコーディングをしている風景を見ることが出来た。MikkoとTuomasもこにいて、Tuomasは満足げな表情をしてみたり、一緒に歌ってみたりしていた。その一方でPipは指揮者やクワイアのリーダーと話し合ってTuomasが満足できるよう腐心していた。

1時間程度経って「ティー・ブレイク」が設けられ(結局私たちは英国人なのだ)、私はカフェテリアに案内されてTuomasと15分ほど話す機会を得ることができた。まずは昨年DerbyのBloodstock Festivalと、LondonのMean Fiddlerで演奏したときのイギリスの印象から聞き始めた。

驚かされたよ! 初めてイギリスに来たような感じだったけれど、こんなことがあろうなんて分からなかったからね……そう、僕たちを見に100人くらいの人が来てたから驚いた。だって、ここではオフィシャルのレコードが発売されていたとは思わなかったからね。

“Century Child”も、他のも出ていますよ。

ああ、OK。

でもそれはBloodstockの後でしたが。

そうかそうか……うん、それはとても大きな驚きだったんだ。とても気持ちが良かったってことさ。イギリスの人たちは世界で最も礼儀正しい人たちだろう? うん、それが今の印象だね。とてもいい。

(そしてイギリスでのギグの後、AtlantaのProgpower FestivalでNightwishを見て、New Yorkにも行ったことを説明した)

本当に? どうかしてたんじゃない? (爆笑)

アメリカでの反応もかなり良かったですね。

うん、そうだね。イギリスと同じくらい良かった。そこに行ってもまた同じようなことが起こるとは思っていなくて、本当に驚いた! 何かが確かに起きようとしているね。

New Yorkの観衆も素晴らしかったです。

ちょうど“Century Child”が発売されたところだからね。みんな一緒に歌ってくれるし、自分でも「何だ? !」って感じで、信じられなかったよ。おだてられているようだった。

ニュー・アルバムのレコーディングのために、ロンドンのこのスタジオを選んだのは何故ですか?

非常に単純な理由、ベストを尽くしたいからだよ。陳腐に聞こえるかもしれないけど、やはりコストよりもベストを尽くしたい。それにレコーディング・エンジニアのMikko Karmila、彼はアレンジをしてくれたPip Williamsとも関係があったんだけど、彼が僕たちに推薦してくれたんだ。彼に連絡を取ると非常に興味を持ってくれて、オーケストラのブッキングもしてくれた。正直に言うと、全体として、オーケストラとして、今までのアルバムの総予算の2倍くらい費用がかかっている。しかし結果は驚くほど素晴らしいものなんだから、何の問題もないんだ。彼らと一緒に仕事が出来て、非常に光栄に思っているよ。

先ほどラフ・ミックスを聞きましたが……あとどれくらい手を加えられるのでしょうか。

アルバムに11曲が収録され、オーケストラはそのうち9曲で演奏する。だから、あなたはほとんど何も聴いてないのと同じだ。

えーと、オーケストラがたっぷり入った“Creek Mary's Blood”と“Ghost Love Scene”がありましたが?

Scoreだ。Ghost Love Score。

Scoreでしたね。はい。 取っておいたメモを理解しようとしました。私たちは11の曲名を知らされていましたが、デモのCDを聴くと、14曲収録されていました。まあ、9曲目はフィンランド語の題名が付いてるから飛ばしてしまったとしても、CDには11曲が入るようです。

うん、トラック・リストは混乱してたからね。最初の7曲は合っているが、ボーナス・トラックのようなものが間に挟まってるから……

A-ha! ボーナストラックは最後じゃなくて中間に?

そう、その通り。

(笑)いや、本当に私たちは混乱してます。全員がです。

それについては謝るよ。

最後の曲は?

“Where were you last night?”だね。あれはカバー曲だ。

誰の?

Anki Bagger。1989年にヒットしたスウェーデンのテクノの曲だ。

(笑)みんな言ってましたよ。「これはボーナストラックに違いない。まるでJon Bon Joviだ」って。

うん。そうらしいね。でも違うんだ。あれはスウェーデンのテクノのヒット曲、ディスコっぽいね。トランスか何かのようなものだ。こういうことをしたのは、「お願いだから私たちをそんなシリアスに見ないでくれ」という宣言なんだ(笑) でもこれはボーナストラックだからね、絶対に。

日本向けにですか?

それは分からない。出来るだけ発売を延期しなきゃならないな(笑)

他にもうちょっとオリエンタルな曲もありますね……中近東風な感じで……

“The Siren”だ。

それです。

そう、うん、コーラス、オーケストラ、バイオリンのソロが無いしね。とてもいい曲だよ。

このようなものを導入するのは、いったいどういう影響があったのかと不思議です。

特にこの曲が? ただエジプトやアラブといった東方的な何かがやりたかっただけなんだよ。ディズニー映画「シンドバッド(Sinbad)」を見たし。この映画は見た?

(まだ見てないということを認めなければならなかった)

5分くらいだが、セイレーンがシンドバッドを誘惑しにやってくる、というシーンがあるんだ。バックには荘厳な音楽が流れ、僕は言った。「このシーンの曲を書いてみたい」って。……セイレーンがリスナーを誘惑するこれがこの曲の全体的なアイディアだ。

不思議に思っていました。というのも、あなたはAfter Foreverとツアーを行い、Mark Jansen(Epica、元After Forver)はAfter Foreverのいくつかの曲に導入されている東洋的な音に強い興味を持っているからです。そこに繋がりがあるのかと思っていましたが……明らかに違うようですね。

そうだね……違うよ。

ギターもまた多くの曲でさらに突出し、ヘヴィになっています。

そう、同感だ。アルバム中でもフロントに居続けるからね。このアルバムはさらにリフ志向で――リフ志向ではあるけどオーケストラもあるしクワイアもある。とても面白いね。

曲を書くのは大変でしたか? DVD“The End of Innocence”であなたは「”Century Child”の曲を書くのは本当に困難だった」と話しています。

非常に困難だったし、どれも等しく難しかった。それでも今までよりはずっと楽しめたんだ。自分にとってもバンドにとっても、とてもポジティブな精神であったということだ。全てのプロセスは本当に大変で、時間がかかったが本当にスムーズに進んだし、みんながここで自分の時間が取れるだけの余裕を取れたんだ。このアルバムには以前よりも少しだけポジティブな感覚があると思う。Just fun, having fun doing what we’re doing.

ちょうどレコード契約が無い期間だったということで、自由を感じられることはありましたか?

そういうことは考えないんだ。全く考えない。ただ自分のことをするだけだ。

アルバムの背景に何か特定のインスピレーションがあるかどうかと思いましたが、どうですか? なにか作曲に興味を持たせたものは?

このアルバムは、よりいっそう映画音楽の方向性にしたかった。これがメタル・アルバムではないことを望んでいる。ヘヴィ・メタルという仮面をかぶった映画音楽であることを望んだんだ。

いくつかの曲について「これは映画音楽になり得る」と考える人がいるからですね。

その通り。でもまだ残りの曲を聴いていないだろう。しかもこのデモはオーケストラが半分も入ってないのを聴いたに過ぎない。既に言ったように、このアルバムを聴くと自分の前に映画があるように見えるんだ。それがアイディアの全てなんだ。

そして、ああ、オーケストラ用の音楽はあなたが用意しましたか? それともPipがアレンジを手助けしましたか?

とても多くのアイディアがあったから、キーボード、クワイア、その他全部をデモとしてレコーディングした。こういうやり方をしたかったんだけど、Pipと話してこう言ったんだ「人には自分の望む全てのことが出来る自由の手がある」 そして彼はあの編曲という驚くべき仕事をした。たくさんの新しいアイディア、音については何も理解していないんだ。かれが全てを書き上げたからね。彼はこのアルバムでとても強力な地位にある。グレート・ガイだよ。

〔Pipはクワイアが歌う全てのパートの譜面を準備しており、推測だがオーケストラのパートもそうなのだろう。これはプロデューサー自身とミュージシャン、シンガーが使っている〕

たいていのメタル・ミュージシャンは曲を書けないのでしょう。それで彼がどれくらい関係しているのかと思い、とても大きな位置を占めているのではないかと考えたのです。

うん、そうだね。彼は存在はとても大きい。

そして今年はツアーがあります。いくつかのインタビューでここ(イギリスに)に戻ってくると言っていましたね。

次の秋にはね。9月か10月かな。

アメリカの次ですか?

そうそう。それが最初だ。年内には確実に戻ってくる。今度はAstoriaだ。

素晴らしく、完璧で、見事で、大きなステージですね。

そのときシンガーたちがスタジオへ戻り始め、そろそろ切り上げなければならない時間かと思った。Tuomasは続けようと言ったが、実際は質問をひとつする時間しか残っていなかった。

他に驚いた点は、(最初の2曲を除いた残りを聴いただけですが)Marcoがあまり目立ってないと言うことです。

実際には、実際にはね、彼は全ての曲で同じくらいいっぱい歌っているんだ。3曲は彼が歌うたくさんのソロがあるし、6~7曲はバックグランドで。だから“Century Child”と同じくらいだと思う。多すぎても彼のパワーが削がれてしまうだろうから、本当に気をつけたほうがいいね。

そしてNightwishのマネージャーEwoが現れ、インタビューは終わりだと合図した。時間を取ってくれたTuomasに感謝し、私たちはスタジオのコントロール室へ戻った。不幸にも今晩のSoilworkのためのチケットを持っている私は、あまりこの場に残ることが出来なかったのでTuomasとEwoにお礼を言い、CamdenのThe Underworldへ向かった。

Get Ready to ROCK!